SHUBB Fine Tune カポ
SHUBBはアメリカのカポメーカーで、特許を取った独自の(テコ方式というか)SHUBB方式が好評を呼び、1980年の発売と同時に世界のカポの代表メーカーとなりました。それから三十数年経ちSHUBB方式ではない新製品のカポがアメリカで発売されました。
「SHUBB Fine Tune Capo」です。(日本では2017年12月現在、一般店舗ではまだ販売されていません)
アメリカでの価格では、今までのスタンダードSHUBBカポに対して「Fine Tune Capo」は約3倍です。カポとしては高級品といえます。
この価格でのSHUBB社の新製品ですから、さぞや最新方式かと思いきや、基本構造は1970年以前からあったU字カポです。装着し、ネジで絞めて固定します。ネーミングからしても従来方式に極力手を加えて最高のカポにしたということでしょうか。
入手してみました。
手に取ってみると、なめらかに仕上げられた美しい金属製で丁寧に作られているのが分かります。ツマミの頭にはアバロン貝が埋め込まれています。
重量も適度です。測ってみると、この「Fine Tune」は38g、今までのスタンダードSHUBBは53g、U字型の代表的なPaigeカポは33g、その他、私が使用しているビクターカポは53g、NSカポは24g、でした。これらからも、この「Fine
Tune」は適度な重量であると言えます。
使ってみて気づいたところは、
1.装着時に開け閉めするストッパー部にバネが入っていて、ワンタッチでカチッと装着できること。
一般的なU字カポは装着前にバーを固定するストッパーを指であけてバーをフリーにし、ネックにはめてバーを戻したら再びストッパーを指で閉じ、ネジを締めて固定します。このストッパーがワンタッチなので、開け閉めが非常にスピーディーです。
2.U字内側のネックのサイドが当たる部分にゴムの保護があること。
これはネックに優しい配慮です。私は今までのU字型はその部分にクロスやセーム皮やコルクを切ったものを貼っていました。このゴムはネック裏に当たる部分や弦が当たるスリーブにも使われていますが、メーカーホームページによるといかなる塗装も痛めることのない特殊ゴムだそうです。
3.ツマミを回して装着するのですが、一般的なU字カポのように、ネジのボルト(オス)部分が回るのではなく、ナット(メス)部分が回りカポに固定されたボルト部分が動くこと。
これもネックに優しい機能です。従来の構造は、締めすぎて万が一ボルト部分が突き抜けたらネックに多大なダメージを与えます。
4.弦に当たるスリーブは、SHUBB社の特徴でもある柔らかめのゴムになっていること。
今までのSHUBBカポの大きな特徴に、この優れたゴムスリーブが挙げられます。適度な厚みと柔らかさがあり、かつ消耗しにくいことです。これにより、カポのバーのアールと、指板のアールが少々違っていてもゴムの伸縮がその差をうめて、チューニングの安定に貢献しています。今までのスタンダードに比べると細目で厚さも少なめですが、その効力は十分に発揮されると思います。また、スリーブのアールは結構ゆるめでストレートに近いのですがこのゴムのおかげでアールのきつめの指板にも対応できると思います。
また、別売りでビニールスリーブもあるようです。
5.ツマミの形は六角形で、6面に1~6の数字があること。
最初見た時、一瞬この数字は何か?と思いましたが、実際に使用してその目的が分かりました。ネジ式のカポを装着固定する時、チューニングが極力狂わないように徐々に締めて行き、6弦全部がきちんと鳴ったギリギリのところで止めるとチューニングへの悪影響が最小限に留まります。慣れてくれば締めた時の力加減でベストポジションがなんとなくわかってくるのですが、多くの初心者はそれ以上に締めてチューニングがシャープしてしまいます。この徐々に締める方法は慎重にすればするほど時間がかかるもので、ライブの合間などの時間がない時には慣れた人でもなかなかすっとできません。
このため、ツマミの6面に数字が彫り込まれ、時間のある時にじっくり決めたベストポジションの締め具合の位置を数字で記憶できるのです。ベスポジメモリー機能です。さらにネックに装着した時に数字が立って見やすいよう、数字はツマミに対して寝かせて彫られています。これはチューニングの狂いを最小限に留めたいプレイヤーには非常にありがたい配慮だと思います。
6.幅が広めのネックは5フレットまでしか装着できないこと。
このように1.~5.まで「Fine Tune」の名に恥じない素晴らしい配慮満載のカポなのですが、レビューなので気になる点も挙げておきます。U字の内側の長さですがPaigeカポと全く同じ52mmです。しかし「Fine
Tune」は2.のように内側のネックのサイドが当たる部分に保護ゴムが付いており、その高さがやや高めの1.5mmなので両側二つ合わせて3mm狭くなっています。つまり「Fine
Tune」の内側の長さは実質49mmで、幅が広めのネックでは5~6フレットまでしか装着できません。4.で述べたようにアールがゆるめのカポですが、アールのゆるい指板はフィンガーピッカー向けのギターが多く、その指板は幅が広めのものが多いかと思います。サイドにゴムを付けるならPaigeカポよりも内側を3mm広げてくれていれば、7フレット越えまで装着できたのにと思います。しかし、7フレット以上にカポを付けることはあまりありませんのでこれで十分との意見もあると思います。
ただし、「Fine Tune Capo」には2種類あります。内側のゴムとゴムの間の長さが49mmの通常タイプ「F1」と、12弦ギターなどにも対応する56mmのワイドタイプ「F3」です。私が購入したのは「F1」のみですが、「F3」なら幅の広いネックにも十分対応できます。
さて、長々と書きましたが、ひとことで言いますと、「Fine Tune Capo」はSHUBB社の威信をかけた名に恥じない良い出来のカポだと思います。
現在「M-Factory」さんの通販サイトで販売されています。この記事をアップした時は売り切れ状態でしたが、1週間ほどで再入荷するそうです。
http://shop.mfac-guitar.com/