65 YAMAHA LS26 ARE / 66 LS36 ARE / 67 FS830


YAMAHA LS26 ARE / YAMAHA LS36 ARE / YAMAHA FS830

 生徒さんから「どんなギターを買えばいいですか?」というご質問がよくある。ご希望を聞き、さまざまな状況から検討し私が候補を挙げ、そこからご本人の好みで選んでいただいている。
 これからアコースティックギターを始めるという方の最初の1本を選ぶ場合は、まだ演奏内容の方向が定まっていないので体型、指の長さ、指の太さ、性別、年齢、予算などの項目がメインとなり、ある程度候補を絞りやすい。しかし、経験者の2本目、3本目などの場合は先ほどの項目に加えて、演奏年数、演奏ジャンル、演奏スタイル、演奏レベル、好みのミュージシャン等の要素が加わり候補を挙げるのはなかなか難しくなる。
 また、候補が決まったとしてもそれが近隣の楽器店にあるとは限らず、弦高やネックの調整などは私のほうでできるため、近隣の楽器店に取り寄せてもらうか、信頼のおける店の通販などで購入する場合が多くなる。このため製品のバラつきが少ないメーカーを選ぶ傾向が強い。これらのことからアコギの最初の1本はYAMAHAをおすすめする場合が多く、2本目、3本目の場合はYAMAHAのほかにHeadway、Yairi、Martinなども候補に挙げている。
 クラシックギターの最初の1本はアストリアスかコダイラをおすすめする場合が多い。

ギター教室を開設するまでは、私個人の趣味として良いアコースティックギターを探し続け、気づけば何十万、何百万のビンテージや手工ギターをネットで物色して弾きに行くということを行なっていたが、開設後は生徒さんに勧められる一般的な価格の良いギターをネットで探して弾きに行くに変わっていった。5万円前後の初めてのギターはどれがいいのか、10万前後の2本目のギターは、20万前後は…。そして、お勧めする時に現物がある方がいいので、教室での生徒さんにお貸しするレッスンギターには定価5万前後と10万前後のお勧めを、講師が使うレッスンギターには定価10万前後と20万前後のお勧めをストックできれば理想である。このため、これらを程度の良い中古や特価の新品を見つけて厳選して入手し、ネックやナット・サドルのセットアップを行ない、生徒さん貸出ギターや講師用レッスンギターにしている。また、生徒さんが希望し、ピッタリのギターがこちらのストックにあれば、調整された状態の良いお勧めモデルを相場価格よりかなりお安くお譲りすることもできる。
 このため、アコギラボのレッスンギターは生徒用も講師用も微妙に増減を繰り返し、少しずつ増加の傾向にある…

 

 2020年でのYAMAHAのアコースティックギターは大きく「Lシリーズ」、「FG/FSシリーズ」、「FG/FS Red Labelシリーズ」に分かれている。

「Lシリーズ」
 YAMAHAのアコースティックギターの最高峰のシリーズである「Lシリーズ」は、1966年に国産フォークギターの第1号として発売されたFGシリーズの上位機種を引き継ぐ形で1974年に誕生した。その30周年となる2004年にはトップをえぞ松からイングルマンスプルースとし、ライトゲージ対応としてブレイシング本数を2本減らすなどの大幅な設計変更を伴うモデルチェンジを行なった。40周年の2014年にもモデルチェンジが行われLシリーズの全機種にA.R.E.が採用された。A.R.E.(Acoustic Resonance Enhancement)とは、YAMAHAの説明では「薬品類を一切使わず、温度、湿度、気圧を高精度に制御することにより、製材後長期間を経た木材の経年変化と同様の変化を短期間で生みだすことによって音の伝達と振動効率を上げ、中低音成分の伸びの促進と高音成分の立ち上がりの増大や減衰の高速化を実現します。」となっている。

 LシリーズはジャンボボディのLL、スモールボディのLS、その中間のLJがあり、それぞれに、カスタムショップの受注生産でモデル番号86、56のカスタム(税抜定価150万円、50万円)、浜松工場の職人で作られるモデル番号36、26のハンドクラフト(税抜定価36万円、29万円)、ピックアップが付き中国の工場て作られるモデル番号16、6(税抜定価10万円、6万円)がある。
 カスタムは値段の関係で一般的な生徒さんに勧めるレベルではないので、生徒さんには予算やレベルや体格に応じてLSかLLから、ハンドクラフトの36や26、あるいは16や6あたりを勧めている。これらについて述べてみたい。
 まずLSかLLかについては、女性には小型のLS、男性には大型のLLを勧める場合が多い。また、フィンガーソロを演奏する生徒さんには高音のバランスの関係で男性であってもLSをお勧めする場合が多い。
 次にモデル番号であるが、2020年での新品実売税込み価格の平均は、6が5万円、16が8万5千円、26が24万円、36が31万円ほどである。16と26の間の値段差が大きいが、これは中国製と国産ハンドクラフトとの差で、音や作りも値段通りの大きな差が感じられる。
 まず6についてはサイドとバックが合板ということもあり、音は16以上のオール単板と比較すると少々寂しいが、実売5万円という値段からすると十分な音と作りであると言える。弦長は645mmと長めだが、指が短くなく少し予算がある方の初めてのギターとしてもお勧めしている。
 次に16については前述のようにオール単板になるため音質は向上する。2本目で予算が10万円以下という方には16をお勧めしている。
 国産ハンドクラフトの26は新品実売税込み価格の平均が24万円で、この価格帯は海外や国産の中堅主流ギターがひしめき合い、人気ギターのGbson J-45あたりともかぶるため条件がそろわないとなかなか候補に挙がってこないが、2014年以降のAREモデルは20万円前半のギターとしては音は1級品であると思っている。見た目がやや地味なため、本当に音を第一優先に挙げる人にはお勧めしている。
 36は26に比べ7万円ほど高くなり、人気ギターのMartin D-28あたりとかぶるため、これも条件がそろわないとなかなか候補に挙がってこないが、26とのスペックの差は、塗装が(26はウレタンに対して)ラッカー、サイドバックが(26はローズウッドに対して)インディアンローズウッド、ボディの周囲には貝の装飾、などであるが、音もやや音量があり、倍音も少し多いように感じる。このことから、36はフィンガーソロに向いた音だと言える。しかしながら、26の方は倍音がやや少ないぶん歯切れがあり、フィンガーにもストロークにも対応できる。弾き語りには26が適しているとも言える。
 このように2014年以降のLシリーズは総じて値段に対するギターとしての品質は良く、コストパフォーマンスは高い。
 また、私の所有ギターと生徒さんのギターを合わせると、LSの6、16、26、36が揃うため、色々と弾き比べをしているが、モデルの数字が大きくなるほどネックの厚みが薄くなる傾向があった。それほど多くの本数を比較したわけではないので、たまたまかもしれないが、6よりも16、16よりも26、26よりも36の方がローフレットもハイフレットもネックは薄くなっている。(ただし、6と16の差はあまりない) ネック幅はカタログ上は44mmですべて同じであるが、実測では6と16が44mm、26と36が43.5mmであった。また、ナットにおける6弦から1弦までのピッチも、6と16よりも26と36の方が0.5mm狭かった。さらに、モデルの数字が大きくなるほどエッジの加工の精度が増し、26や36のエッジはかなり丸みがあるため、ネックは握りやすく数字上よりもさらに細く感じる。

【LS26 ARE】
 LS26はウレタン塗装で耐久性もありフィンガーにもストロークにも対応する音であるため、レッスン用ギターとしては最適であるが新品価格がそれなりのため、良い価格の程度のいい中古を発見したら購入しようかと日頃から思っていた。しかし、有名プロが使用し、2014年以降のAREモデルは人気商品のため中古市場にはあまり出ず、出ても程度の良いものは高めの価格が多かった。
 年の暮れ、各店で12月の決算セールが始まり、お買い得のギターはないかとネットを徘徊していたら、狙い通り決算セールで相場よりもかなり安くなっているLS26AREの中古品を発見した。発見当日にネットに公開されたばかりのもののようである。この値段ではすぐに売れるであろうと思い、すぐに店に電話をして詳細を確認した。ワンオーナーで2016年製の委託品で新品同様とのこと。これはまたとない機会と購入した。翌日到着したギターは目を近づけないと分からない小さな点の打痕が1か所あるだけの新品同様品で、3年経っている割にはフレットの減りもごくわずかであった。フレットとピックガードの弾き跡から判断するに、ローフレットのみの演奏で指でポロリポロリと丁寧に弾いていただけではないかと思われる。26にしては低音も良く出ていて、レスポンスは優秀で倍音がやや少なめのシャープでブライトな音で、軽めのストロークが心地よい。まさにフィンガーとストロークどちらの演奏にも柔軟に対応でき、レッスンギターにピッタリであった。さらに、所有して分かった事であるが、FSX3と比較してオープンバックのペグ(糸巻き)の巻き心地と精度が非常にいい。(定価がLS26はFSX3の2倍以上であるので当然ともいえる) 良く見ると世界トップメーカーのゴトー製で、ゴトーのSE700のツマミをヤマハオリジナルにし、カラーを艶消しのエクセレントゴールドにしたものであった。FSX3のペグの精度にかなり問題を感じていたため、LS26のペグをFSX3に移動し、LS26にはゴトーのオープンバックの最上位モデルSXN510エクセレントゴールドを取り付けた。

【LS36 ARE】
 LS36はラッカー塗装で耐久性はやや劣るが、26よりも中低音の音量があり倍音も豊富である。フィンガーソロ用ギターとして適しているが、これも新品価格がそれなりのため、良い価格の程度のいい中古を発見したら購入しようと思っていた。しかし、こちらも多くの有名プロが使用し、2014年以降のAREモデルは人気商品のため中古市場に出ても程度の良いものは高めの価格が多かった。
 LS26を購入してからまもなくしての年末、同年春に購入したという保証期間がまだ数か月残っている、ほぼ無傷とのLS36がまずまずのスタート価格でオークションに出品された。終了時刻はレッスン中だったため、ここまでならお買い得という金額まで入札しておいたら、落札できていた。到着したLS36は本当にほぼ無傷であったが、裏板センター継ぎ目にほとんど目立たないヘアラインクラックが少しあった。極薄ラッカー塗装であるから継ぎ目部分の塗装クラックはある程度仕方ない。次の問題は弦高が低すぎる状態であった。サドルをかなり削っていたため、ロッド調整ではハイフレットのビビりが解消しないためサドルを交換した。最後の問題はタバコ臭である。かなり煙った室内にずっと置かれていたようで、ギターの外部・内部、ハードケースにもヤニ臭がある。個人で楽しむときは少々の臭いは我慢できるが、レッスンでは使えない。まだ新しいギターであったのが幸いし、タバコの臭い消し等を用いて入念にふき取り、何とか消臭できた。
 サドル交換により弦高も適正になったため音の張りも増し、LS36本来の音の良い部分がクローズアップされた。倍音も豊富で音に奥行きがある。また、前オーナーは1フレットにカポをして通常のチューニングをおこなっていたのか、1フレットには全く減りが無く、1・2弦の2フレットから8フレットまでが満遍なくほんの少し減っていた。さらにピックガードにはストロークをした形跡は無く、小指の先をピックガードに付けてのフィンガーピッキングのみで弾いていたようである。さらに、ペグ(糸巻き)がゴトーのSGV510ZのX-Goldに交換されており、チューニングの精度は非常に高い。タバコの消臭には苦労したが、その他は丁寧に使われていたようで、鳴りの良い個体が入手できた。

「FG/FSシリーズ」
 YAMAHAのアコースティックギターの入門シリーズである「FG/FSシリーズ」は、1966年の誕生から多くのモデルチェンジを経て、2016年春に大幅な設計変更がなされ800シリーズとなった。鳴りと強度を兼ね備えたスキャロップブレイシングの採用などから、音のグレードが大幅にアップした。材などの違いによりモデル番号850、830、820、800(定価5万円~3万4千円)などがあり、それぞれに大きいボディのFG、小さいボディのFSがある。メーカーは820が主流と考えているようで、820だけカラーバリエーションが多く5色である。ちなみに830は3色で、他はナチュラル1色のみである。
 値段と内容を考えると、お勧めはやはり820か830となる。2020年初旬での新品実売税込み価格の平均は820が32000円、830は36000円ほどである。大きな違いはサイド・バックの材質で、820はマホガニー、830はローズウッド、どちらも合板であるが音にもそれなりに違いが出ていて、820は軽快で明るい音、830はやや低音が前に出て重みがある。好みの問題ではあるが830の方が広いジャンルで使えるかもしれない。しかし、サイズや弾きごこちは同じなので、3~4千円の違いをどう考えるかということになるだろうか。どちらも値段を考えれば十分な音であり、しばらくはこの830か820を最初のギターとして勧めていくことになるであろう。ただし、中国工場での製作のため、ナットやサドルの調整は雑なものが時々見受けられ、たまに弾きにくいものもあるため、適切な調整が必要である。
 このように820、830は入門用として優秀なためネットなどでの「3万円代のおすすめギター」には非常によく登場し、購入する人が多く、買ってはみたがほとんど弾かずに放置されたままというものも多くなる。したがって、ネットオークションなどでピックガードの保護シールもそのままの新品同様の中古品をしばしば見かける。それらの中から厳選し、特にこれはというもがあれば一応入札し、競ることはせずに運が良ければ落札する。このスタンスで、年に1本ほどを入手し貸し出し用として使っている。

【FS830】
 現在所有のFS830もこの方法で入手した。無傷の新品同様品で弾かれていた形跡は全くない。もちろんフレットの減りはなくピックガードの保護シールもそのままである。弦をカスタムライトにし、ナットとサドルとネックを調整し音がビビらない最も低い弦高にした。弦長は短めでネックの幅も細目のため押弦しやすく非常に弾きやすい。FSはボディも小さめであるが、音も値段を考えれば十分に出ており、初級者用のレッスンギターにしている。


 「FG/FS Red Labelシリーズ」は2019年5月発売のモデルである。ここの前にある「64 YAMAHA FSX3」に詳細を紹介しているので、そちらをご覧いただきたい。

 YAMAHAのアコースティックギターはこれらのほかに、ミニサイズの「CSF」や、エレアコなどもあるが、未だ入手はしていないため、紹介はまたの機会としたい。
 なお、女性を対象にした2019年7月発売でおしゃれなデザインが人気の「STORIAシリーズ」であるが、生徒さんが購入された「STORIA Ⅱ」についてFacebookで述べているので、そちらを参照願いたい。
 アコギラボFacebook「STORIA Ⅱ」はこちら。