48 黒澤哲郎 Especial

黒澤哲郎 Especial(クラシックギター)

 黒澤哲郎(クロサワ テツオ)氏は1976年茨城県生まれの日本若手トップクラスの名工である。
Especial(スペシャル)は黒澤哲郎氏のラインナップでは中位モデルである。トップにジャーマンスプルース単板、サイドバックにブラジリアンローズウッド単板を使い、オールシェラック塗装で、スパニッシュな元気の良い音と優れた工作精度を誇る。

 哲郎氏の2010年製Estandardをオークションで入手し、非常に傷などが多いため定価の3分の1以下の超安価で落札できた。値段を考えると音は申し分なく、弦高やフレット状態にやや問題はあったが、2ヶ月後に黒澤氏のギタークリニックでご本人に調整してもらい、非常に弾きやすいギターになった。このとき、黒澤氏にギターについていろいろ話をしていただき、上位機種のEspecial(スペシャル)と最上位機種のDinastia(ダイナスティ)を弾かせてもらった。この2機種はサイドとバックがハカランダのモデルで、ローズウッドのスタンダードとはブレイシングパターンも変えているとのことで音の出方が違う、スタンダードの方が音はすっと出やすいがやや平坦で和音などは少し固まって聞こえる。スペシャルとダイナスティはスタンダードに比べてアタックが強調され分離が良く深みがあり、タッチによる音色の変化も大きい。気軽に弾けるスタンダードは練習用や普段弾きにはいいが本格的な演奏には不満もある。

 新品のスペシャルは値段が高いので、中古はないかとネットを見てみると、ヤフーオークションに状態がよさそうな2009年のスペシャルが出ていた。大きめの追加画像も豊富にあり、弦高などの数値データも丁寧に説明されており、評価などからも大きな問題はなさそうである。平日昼間が終了時間ということもあってか、すんなりと落札できた。

 一般的にオークションでギターを購入する場合、実物を見たり弾いたりできないため、基本的には危険度が高い。商品説明にある「通常の使用における弾き傷などはありますが比較的奇麗です」などの感覚的表現ではどの程度か分からない。手放すということは出品者がギターに何らかの不満を持っている場合が多いが、そのマイナス面はなるべくぼかして説明されているはずである。傷はある程度仕方ないが、板の割れや、ネックの反り、ブリッジの持ち上がりなどは致命傷で簡単には直せない。このため、詳細な写真を多く提示しているものや、今までの出品状況などによって状態は判断し、音に関しては製作者や製作年代から判断する。有名製作家のものであっても年式が古いとひどい音しかしない場合もある。そういう意味では試奏できないオークションでギターを買う場合、写真やメーカーや年式からある程度の状態や音を予測できない人は、年式の新しいばらつきの少ない量産品で、失敗してもダメージの少ない安価な物をねらう方が良い。

 送られてきたギターは、ほぼ予想通りの状態であった。6年ものの黒澤哲郎のスペシャルであるため音がひどいということは考えにくく、実際予想通りの良い音であった。音量があり、低音もまずまず締まっている。高音も輪郭がはっきりしており良く通る音である。定価を考えると仕方ない部分もあるが、バランスはプレーン弦のローポジションが少し圧が弱い傾向にある。糸巻きは2009年のスペシャルに付いていた物より安価な物に取り替えられていることは画像からわかっていたのでスタンダードに取り付けたゴトー510と交換した。予想外であったのはナットで、1弦が通常よりかなり低いセッティングになっており、解放音が1フレットでびびり気味になっている。全体的にも弦高が低めだったので、ナットとサドルを交換した。その後は中古購入時に必ず行うクリーニングをおこなった。その内容は、内部を掃除し、ミラーでブレイシングを確認し、塗装のくすみを超微粒子コンパウンドで軽く取ってからワックスをかけ、指板をレモンオイルでクリーニングし、フレットを磨き、弦交換で終了である。