30 GUILD F-412 (12弦ギター)

GUILD F-412 (12弦ギター)

 1970年代の日本のフォーク少年の憧れは、アコースティックギターの御三家と言われていたアメリカの「マーチン」「ギブソン」「ギルド」であった。もちろん当時の私にとって3社ともはるか雲の上の存在で、所有するということは考えたことも無かったが、僕が好きだったポール・サイモンが、初期はMartin D-18を、中期はGuildのF-30Aragonと12弦ギターのF-212を使用していたので、MartinとGuildは特に憧れていた。さらにギルドは12弦ギターには12弦用のブレイシングやダブルのアジャストロッドなど特有の対応を行っており、当時から「12弦ならGuild」という声が聞こえていた。12弦ギターを駆使する内外のプロも多くがGuildの12弦ギターを使用していた。

 私の12弦ギターの使用頻度はさほど多くないので、カナダのシーガルの12弦で満足していたが「12弦ならGuild」と言われていた頃の、フェンダー社に買収される前の1986年製Guild12弦をネットで見つけ弾きに行った。音のバランスの良さとリバーブ感、さらにネックの細さと弦高の低さによる弾きやすさに感心した。状態も良く非常に気に入ったが、相場よりもやや高めの値段だったため、交渉の末それなりの値引きに成功し、シーガル12弦を下取りに出して購入した。

 ギルドはアルフレッド・ドロンジが1952年にニューヨークで設立した。1960年~70年代のアコギブームに乗り、Martin、GibsonとともにGuildは世界3大アコギメーカーになる。しかし、1972年に創業者ドロンジが航空機事故で他界すると、経営が徐々に悪化し、1980年代のアコギ低迷期もあり生産体制を縮小、このため小数職人による手作り工程が増えたため80年代中期には品質が向上し、一時期回復の兆しもあったが、エレキギターへの比重が増えだした90年代に経営状態はさらに苦しくなり、1995年にフェンダー社に転売される。さらに2010年以降は、中国の工場で製造されている。