04 スズキ ダイナミックギター

スズキ ダイナミックギター 1975~1976

 ダイナミックギターとは、1960年頃ヤマハがクラシックギターをベースに金属弦仕様にして発売したギターで、ヤマハが国産初の本格的フォークギターとしてFG-180とFG-150を発売する1967年まで製作されていた。ボディはクラシックギターとほぼ同じ大きさで、ペグポストは金属弦用で細めのものだがヘッドはスロッティッド、ネックもクラシックギターよりはやや細いものの、かなり幅の広いもので太かった。歌謡曲ブームでこれがまずまず売れたため、他のメーカーも自社のクラシックギターを金属弦仕様にして発売していた。「ダイナミックギター」は製品名であるため、本来はヤマハ製のものだけをダイナミックギターと言うべきである。他メーカーでは「スティール・ギター」などの名称もあったがハワイアンミュージックで演奏するスティールギターとかぶっていたりして定着しなかった。したがって、当時はクラシックギターをベースに金属弦仕様にしたものを総じてダイナミックギターと呼んでいたようである。このギターも本来は「ヤマハダイナミックギターのようなスズキ製ギター」というべきであるが、ここでは当時のようにスズキ ダイナミックギターと呼ぶことにする。

 1960年代後半に各メーカーがフォークギターを発売するまではこのダイナミックギターが日本製の金属弦ギターであった。しかし、メーカーによってはペグとブリッジを金属弦仕様にしただけのものもあり、音は大きいが締りが無く、力木もダイナミックブレイシングと呼ばれ、強化はしていたようであるが張力の大きい金属弦には耐えられず、ボディが膨れたり、ブリッジが浮いたり、ネックが反ったりするものも多かった。弦高は上がり、ネックも極太だったため非常に弾きにくかった。このため、国産のフォークギターが発売され始めると、ダイナミックギターはすぐに姿を消してしまった。

 入学する高校が決まった1975年中3の3月、中2からの友人で2年間うちにギターの練習に来ていたN君が高校は別になるので中学最後の記念に彼が通っていた塾の卒業お別れ会の出し物で「かぐや姫」の「神田川」と「22歳の別れ」を披露しようと言ってきた。私はそこの塾生ではなかったが、塾長は自らアコーディオン伴奏で歌を披露するなどの音楽好きの方で、特別許可をもらって私もお別れ会に参加し演奏をした。これが私の人前での初演奏となった。その帰り道、N君のメインギターはずっと私が売ったHottaであったが、その前からN君の家にあったスズキのギターを今まで教えてくれたお礼に進呈するという。彼の気持ちが嬉しかったがいただくのは申し訳ないということで2000円を支払った。
 しかし、そのギターはまさにダイナミックギターで、クラシックサイズのボディにびっくりするような太いネック、スロティッドヘッドには金属弦仕様であるが回すのに指が痛くなる硬いペグ(糸巻き)、あとから無理やり貼り付けたような黒いピックガード、金属弦張りっぱなしのためふくらんだトップと高い弦高という悲惨なものだった。しかしこれが1年半後に「持っていて良かった!」となるのである。その話の詳細は「07 S-Yairi 600」で述べることにする。