13 ペグ

 ペグとはヘッドにある糸巻きのことである。そのほとんどが工業製品で金属製のため同モデル内での製品のバラつきはほとんど無い。アコースティックギターではソリッドヘッドに左右3個ずつ付けられるものがほとんどである。

 ソリッドヘッド用のペグは、ギヤがカバーで保護されているロトマチックタイプと、ギヤがむき出しになっているオープンバックタイプの2つに分かれる。昔はロトマチックの方が性能はいいと言われていたが、近年のペグは性能も向上し、上位機種であればロトマチックとオープンバックの精度差はほとんどないと言える。ヴィンテージタイプや小型ボディのギターにはオープンバックが見た目しっくりくるという意見を時々聞くが、私はあまり気にしない。重さの差を気にする意見もあるが近年のロトマチックは軽量化が進み、オープンバックとさほど変わらなくなってきているため、私はあまり気にしていない。むしろ、後述するポストの長さを気にしている。

 次にギヤ比の差がある。Gotohロトマチックでは1:14、1:15、1:18、1:21などの種類あり、1:15のモデルが最も多い。1:15の場合、つまみボタンを15回転させると弦を巻き取るポストが1回転するということである。1:21の方が少しずつポストがまわるので精緻なチューニングが出来そうであるが、ゆっくり巻き上げるためナットの溝の仕上げ精度が伴わないと、溝で弦が引っかかりやすくなるし、弦の交換のときかなりの回数つまみボタンをまわさねばいけないので、私のような高齢者はワインダーを使っても手首が疲れるというディメリットもある。

 最後にポストの長さと穴の位置の問題がある。弦を巻き取っているポストの長さがメーカーによってばらつきがあり、ポストにあけた弦を通す穴の位置もばらつきがある。さらに、ギター側のヘッドの厚みもメーカーによりばらつきがある。新品時はメーカーもヘッドの厚みとネックとヘッドの角度などから最適となるポストの長さのペグをチョイスしていると思うが、前ユーザーがペグを交換している中古品には薄めのヘッドなのに長めのポストで穴も上方にあるペグが付いていたりする。この場合、弦の巻き数が少ないとナットからペグへの弦の角度が小さくなるため、弦のテンションがゆるくなって力の無い音になる場合がある。角度を確保するためには巻き数をかなり多くしなければならない。こういう細かい部分にも対応できるよう、ポストの長さを調節できる画期的なペグがある。GotohのHAPモデルである。

 写真の左は購入時のペグで、ペグポストがヘッドの厚みに比べて長くヘッドからかなり長く突き出ている。弦を通す穴の位置も上の方にあり、1弦は7回ほど巻いているにもかかわらずナットからの角度が確保されていないうえ、各弦の角度がばらばらになっている。理想はヘッド面と各弦が平行になることであるが、そうするためには1弦は20回以上は巻かねばならない。弦の長さが足りなくなる恐れすらある。

 プレーン弦(1・2弦)はワウンド弦に比べてポストとの摩擦抵抗が小さいため、巻き数が1~2回だとチューニング後に緩んでくる恐れがある。ワウンド弦は2回前後で安定する。余った弦を逆に巻いて弦の下にくぐらせ、少ない巻き数で安定させる「マーチン巻き」という方法もあるが、外す時にポストの穴を痛めないようにする手間もあり今はしていない。私のアコギの巻き数の基準は、1・2弦6回、3・4弦4回、5弦2回、6弦1回である。

 写真の右はGotohのHAPモデルに取り換えたものである。ポストの高さを調整し、各弦を理想の巻き数にした状態で6弦すべての角度が揃い、ヘッド面と弦がほぼ平行になるようにしている。これにより、芯の通った音になったように思う。