指板は20本ほどの金属のフレットが打ち込まれ、指で弦を押さえて弦をフレットの上にのせ、弦の振動部分の長さを変える事で音程を変化させている。弦を指で押さえるときに指板に指が当たるため、指板は磨耗しにくい硬い材が使われる。上級機種にはエボニーが使われ、ローズウッドも使われている。しかし、ここでも良材の乱伐による問題がからみ、良質の真っ黒なブラックエボニー(本黒檀)は入手が困難になっている。このため、最近は高価な手工最上位機種でさえ黒さにムラのあるものや、縞目が入ったストライプドエボニー(縞黒檀)を使用し、縞目を消すために黒く染めている場合が多い。レモンオイルなどで頻繁に指板を拭きすぎて染料が取れ、縞目が出てきてしまったという話も聞く。指板にレモンオイルを使用する場合はオイルを少量付けたティッシュなどで軽く拭いてティッシュが染料で黒くならないか確認する必要がある。
アコースティックギターの指板には普通ポジションマークがある。ポジションマークには2種類あり、フレットとフレットの間にあるメインのポジションマークと、指板の横の狭い部分にある小さなサイドポジションマークである。演奏時に参考にするのは小さなサイドポジションマークの方で、メインのポジションマークを参考に演奏するのは初心者に多い。なぜなら、メインのポジションマークを見るためには、座奏でも立奏でも、ギターのトップを正面ではなく斜め上向きにし、姿勢もやや猫背で覗き込むようにしなければならないので、不必要に左手首が曲がり、余分な力がかかる良くない演奏姿勢になる。初心者の間は何弦を押さえるかも目視せねばならないので、指板面を覗き込むのは仕方ないが、フレット数のみを確認すれば良い段階に来たらサイドポジションで目視し、正しい演奏姿勢で余分な力の入っていない演奏を心がけたい。したがって、メインのポジションマークは本来の役目ではなく、デザイン上の理由で付けているものも多い。
クラシックギターは普通、メインもサイドにもポジションマークは無い。「何も無くても何フレットかはわかるようになるべき」という理想論から、マークの無いものがスタンダードなのではないかと思う。私はその域にまで達していないので、念のためサイドの7Fのみ小さなドットマークを付けている。マークを付けることによるディメリットは特にないため、最近はトッププロでも7Fのみ付けている人は多い。