04 ボディ

 ボディは弦の振動エネルギーを音に変換・増幅する最も重要な部分である。サイズや材質はどうか、ボディのどの部分をどのように振動させ、どの部分の振動をおさえるか、などによってそのギターの音のキャラクターが決定する。

 アコースティックギターのボディサイズについては、他社のものであっても次のようにMartinのモデル名を使うことが多い。ここでも以下の名称を使用する。
 ・クラシックギターほどの小型:0、00(オゥ、ダブルオゥ)

 ・クラシックギターよりやや大きい中型:000、OM(トリプルオゥ、オゥエム)

 ・くびれの少ない大型:D(ドレッドノート)

 ・Dより大きい超大型:J(ジャンボ)

 また、GibsonのJ-45に代表されるラウンドショルダーがある。これはドレッドノートとほぼ同じ大きさで、ボディ上部の肩の部分がドレッドノートよりも丸みが大きい「なで肩」シェイプである。ちなみに、HummingbirdやDove、1970年~82年のJ-45はドレッドノートのように肩が直線的であるが、これをスクエアショルダーと言う。
 このほかに、SJ(スモールジャンボ)という意味の良くわからないボディサイズの名称もある。「小さめのJ」という意味らしい。

 一般的には、ボディが大きくなれば、音量は増し、サスティンは長くなり、アタックレスポンスは落ち、低音が強調され、音質は丸く重厚で暗めの傾向になる。反対にボディが小さくなれば、音量は減り、サスティンは短くなり、アタックレスポンスは上がり、低音が減るため高音が強調され、音質は鋭く軽快で明るめの傾向になる。
 これはあくまでも一般傾向であり、力木、材質、設計などにより、これに反する傾向を持たせることは可能である。しかし、とにかく大きな低音が出るということをギターの条件の最優先にしたい人が、ルシアーに小型ボディの0サイズで製作依頼をした場合、「構造上、無理がありますね。」となるであろう。
 ボディをどんどん大きくすれば、音量は増えていくかもしれないが、アタックは少なくなり、モコモコした音になり、何よりもかかえて弾けなくなる。どこで折り合いをつけるかが重要である。

 最近はOMや00などの小さめのボディに人気があるようである。1980年代初頭にフォークギターブームが去り、1990年代後半にエリック・クラプトンがアコギブームを再燃させたが、そのときクラプトンはMartinの000-42を弾いていたため、小型ボディに人気が出るのは当然であろう。また、弦やボディの設計技術が進み、小さめのボディでも十分な音量が出るものも多くなってきており、PAやピックアップの技術も向上したため、昔のようにライブで生音の音量を必要とはしなくなってきている。構えやすいと言われる小さめのボディが主流になるのも理解できる。

 このように、クラプトンブーム以降にアコギを始めた人は、最初に小型ボディのギターを購入した方が多く、Dサイズは大きすぎて弾きにくいと敬遠する意見をよく聞く。私は1970年代前半のフォークブーム真っ只中にアコギを始めた。当時はDサイズ(ウエスタンギターと呼んでいた)がスタンダードであり、000は子供用、女性用という位置づけであった。日本製の000サイズはほとんどが入門用のオール合板で、トップ単板を探すのに苦労するという時代であった。このため、私は大柄な体格ではないが、今でもDサイズを弾きにくいと思ったことは無い、要は慣れの問題だと思われる。