03 ギターの各名称

 ここで用いる各ギターの名称と略称であるが、現在の慣例にならって表記したいと思う。
 まずは「アコースティックギター」の定義であるが、広義ではエレクトリックギターの対義語としての「電気的増幅をせず、ボディの振動で音を出すギター」という意味で、金属弦のフォークギターおよびナイロン弦のクラシックギターなどの総称である。生ギターと言う人もいる。

 しかし、1980年頃にフォークブームが去り、2000年頃から広まり始めたフィンガーソロなどに使う金属弦のアコースティックギターをフォークギターとは呼ばなくなった。このため、最近では一般的に「アコースティックギター」と言えば金属弦のフォークギターのことを言い、「ナイロン弦のアコースティックギター」は昔も今も使われている「クラシックギター」あるいは「ガットギター」と一般的には言われている。 また、カッタウェイなどが付いた新しい形のナイロン弦のアコースティックギターを「ナイロン弦ギター」と言うこともある。また、「ナイロン弦ギター」に対して「金属弦のアコースティックギター」を「スティール弦ギター」とも言う。
 ちなみに、「スティールギター」はハワイアンミュージックで使うエレキギターを横にして足を付けたスライド奏法専用ギターのことで、「スティール弦ギター」とは別物になる。

 したがってここでは現在の慣例にならって、フラットトップ(表板が平ら)の金属弦アコースティックギターのことを「アコースティックギター(アコギ)」、アコギのピックアップ付きを「エレアコ」、ナイロン弦アコースティックギターのことを「クラシックギター(クラギ)」または「ナイロン弦ギター」、ナイロン弦ギターのピックアップ付きを「エレガット」、エレクトリックギターのことを「エレキギター(エレキ)」と呼ぶことにする。また、アーチドトップ(表板がバイオリンのようにふくらんでいる)の金属弦ギターのことを「ピックギター」と呼ぶ。

 パーツは大きく、ボディ(胴)、ネック(棹)、ヘッド(天神)の本体3つと、弦(ストリングス)に分かれる。

 ボディは、トップ(表板)、サイド(横板)、バック(裏板)からなり、トップには弦の一端をとめるブリッジ(駒)があり、そのブリッジには弦を支えるサドル(下駒)がある。またトップにはボディ内の空気の振動を放出させるサウンドホールという丸い穴が空いており、トップやバックの裏には弦の張力やボディの歪みをささえ、音のキャラクターを作る力木(ブレイシング)が接着されている。

 ネックには弦を押さえる部分の指板(フィンガーボード)がある。その指板の上には音程を決定する20本ほどの金属のフレットがあり、端には弦を支えるナット(上駒)がある。

 ヘッドには弦を巻き上げチューニング(調弦)するためのペグ(糸巻)があり、多くのアコギメーカーはヘッドにブランドのロゴを入れている。

 最後にストリングスに関する漢字の表記であるが、「弦」と「絃」の2種類がある。本来、楽器のゲンは「絃」が用いられていたが、「絃」は昭和初期に文部省が制定した常用漢字から外れてしまった。このため、通常の文章では「弦」が多く使われている。しかし、厳密には「弦」は平面図形における円周の一部である弧の両端を結んだ直線である弦のことを表し、「絃」は楽器などのストリングスのことを表す、となっている。このため、「ギターの絃」と書くのが本来の日本語表記としては正しいのであるが、現在の一般慣例としては多くが「ギターの弦」となっているので、ここでは「弦」と表記している。(琵琶や三味線などの和楽器では糸とも言うが「絃」表記がいまだ一般的である)