16 カッタウェイ

 ギターを立てて、ボディを正面から見た場合、くびれの上部のボディをアッパーバウトといい、くびれの下部のボディをロウワーバウトという。カッタウェイ(Cut Away)とは右アッパーバウト(サウンドホールの右上)に切り込みを入れて高音部分のハイポジションを弾き易くしたものである。出っ張り部分がとがっているものをフローレンタインカッタウェイ、丸みのあるものをベネチアンカッタウェイという。

 トップとバックの一部が切り取られ、サウンドボードの面積とボディ容積が減るため、カッタウェイによる音量の低下を懸念する意見をしばしば聞く。力木構造を見ると分かるが、アコギはサウンドホールの上に、クラギはサウンドホールの上下に太い力木が横に貼られているものが多く、そこがトップの振動の区切りとなり、それよりも上部のアッパーバウトでは音を作り出すトップの振動はあまり関係しない。弦を弾いた直後ロウワーバウトに触れると大きく振動しているのが分かるが、アッパーバウトに触れてもあまり振動は感じない。よって、カッタウェイによる音量の低下はごくわずかにはあるかもしれないが、ほとんど気にならないレベルであるというのが定説である。世界的トップルシアーのアーヴィン・ソモギも自身のアコギ研究書「The Responsive Guitar」でその旨を述べている。

 このように、カッタウェイの有無による音質変化は少ないということであるから、とがっているフローレンタインカッタウェイと、丸みのあるベネチアンカッタウェイで音質の変化はまず無いといってよい。見た目の好みで選べば良いが、やはり見た目は大切で、とがっているフローレンタインカッタウェイのあるギターはシャープでレスポンスの良い音のイメージを受け、丸みのあるベネチアンカッタウェイのあるギターは甘く優しい音の印象を受けるのは私だけであろうか。